円周率世界記録を達成した原口證が、自らの人生経験から得た教訓やコツについて、書き綴るページです。

『痴呆症対策への提案・その4』

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『痴呆症対策への提案・その4』

 

 ではどうするか、ということですね。

 

 先の「博士の愛した数式」に話を戻します。

 

 博士は毎日通ってくる家政婦を覚えることができなく、彼女が訪問するその都度に
 「始めまして、…」と初対面の挨拶をするのでした。いわゆる長期記憶が出来なく

 

なっているということです。

 

 そこでですね、もしも家政婦さんが帰り際に博士の頭を思いっきり叩いてみたとし

 

たならどうなりましょうか。或いはほっぺたを勢いよく殴ったなら、どうでしょう。

 

 つまり、心身にインパクトを加えてみるのですよ。こうして置けば、これまでは一

 

日も保てなかった記憶を二日、三日と永らえさせることにはなりませんでしょうか。

 

温厚な人柄で日々を過ごしているのですから、これまでにはなかった心が荒(す)さ

 

むような経験をしたとなったなら、きっと少しは忘れにくくなりましょう。

 

 或いはまた、愛して止まない数式を激しく罵ってみるのですよ、「そんなもの、私

 

の生活には何の役にも立ちません」とですね、口汚く嘲(あざけ)ったなら如何なり

 

ましょうか。きっと、次の日を待ち構えているのではないかと思うのです。憤慨覚め

 

やらずという風情で、ですね。こちらの方も自尊心を折られるような行為に心が波立

 

たないわけがありません。

 

 博士のような学者は能動的思考をしなれている分、我が心身を傷つける行為に反応

 

する受動的記憶力が未だに温存されている可能性が高いのではないかと思うのです。

 

 そんなように、博士がこれまでに使ったことのない記憶細胞の回路を刺激したなら

 

反応力も強いのではないかと推定できますゆえ。

 

 更には、家政婦が帰った後は等身大の写真でも家に備えて置き、次の日に彼女が来

 

るまで始終、写真に声を掛けさせたなら記憶が繋がるのではないかとも思うのです。

 

いずれの作戦も効果があったなら次からの展開も図りやすいでしょう、周囲の人々以

 

上に本人そのものが大いに期待し始めます。或いは自ら考え提案してくるかもしれま

 

せんね、積極的になるはずです、楽しみになるはずなのですよ、きっと。

 

 何せ、新規の能動性回路ができ始めるのですから、そうなるはずなのです。

 

 博士が家政婦の子どもに愛称を付けて慈しむようになっている話も差し挟まれてい

 

ますが、これは実際に好転の兆しがあったという証拠でしょう。

 

《希望というものは人間が生きている間は付き添っているはずです、手の届く位置に

 

いて、ですね》

 

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